ゲスの経典

日本ゲスリック教会の経典。

良い差別と悪い差別

最近はコロナでめっきり減ってしまったが、その前までは『本当にこれでいいのか?』と議論が起きるくらい外国人観光客が日本にたくさん来ていた。

今でも外国人技能実習生など、労働者として日本にいる外国人の方は多い。

そうした方々がコロナを理由に解雇されたり、借金を抱え母国に帰ろうとしても帰れない、という問題も起きているようである。

アメリカではアジア系住民に対するヘイトクライム、中国ではチベット・ウィグルなど少数民族への差別。こういった問題は今後解決されていくべきである。

つまり、一般に言われる差別、悪い差別。

しかしあなたはこの世に『良い差別』もあると言われて、想像できるだろうか。

実例で説明する。

私の近所のコンビニに外国人(東南アジア系?)の店員さんがいる。日本語も上手で、礼儀正しく、日本人と同じように真面目に働いているようである。

良い店員さんだが、私は日本人として日本という国に誇りを持っている。だから、その店員さんの母国よりも日本の方がいい国なのだ、格式が上の国なのだ、ということを示したい。

もちろん、そこで相手が外国人だからといって横柄な態度を取ったりしてしまえば、それは普通に『悪い差別』になってしまう。だからもちろんそんなことはしない。むしろするのはその『逆』である。

ちゃんとマスクをして入店し、入り口のアルコールで手を消毒し、トイレを借りる時には店員に声をかけ、騒いだりせず、レジの前ではきちんと整列し(もちろん、間に割り込んだりしない)、待たされても苛立って文句を言ったりもしない。自分の番が来て店員に呼ばれたら前に進み、「レジ袋はご利用ですか?」「揚げ物商品はいかがですか?」「レシートはご入用ですか?」など聞かれたら丁寧に「はい」「いえ、結構です」などと答え、くしゃみが出そうになったら横を向いて袖で口をふさいだりもする。会計が済んで、もし温めている弁当があったりしたら速やかに脇へよけ、それも終わって「ありがとうございました」と言われたら、こちらも「ありがとうございます」と返して、お店を出ていく。にこっと笑顔も見せられたらなお良い。

その間、頭の中では以下のようなことを考えている。

『この外国人の店員さん、なんて日本人はやさしくて礼儀正しいんだろう、とか思っているんだろうな。母国の人間とは大違いだ。日本に帰化して日本人として死ぬまで生きていたい。もし母国に帰ったらみんなに自慢しなくちゃ。日本人は本当に大声でしゃべったりしないで、列に並んで、待たされても文句を言ったりしないで、清潔で、周りへの気配りができて、こちらは仕事としてサービスしたのだから当たり前のことだったのに、お礼まで言われた。僕らの国とは大違いさ!僕らはもっと日本人のことを見習わなければならないんだ。……とか、周りの人に言うんだろうな。日本のことが好きな外国人が増えるんだろうな。ああ、自分はなんていい日本人なんだろう』

……と、気高さと誇りを胸に抱き、満足してコンビニでの買い物を済ますのである。

ちなみに、使う金額はプライベートブランドのドリンク一本税込み100円、で構わない。100円で日本人の格式の高さをグローバルに宣伝するのだ。

 

「その階段を上るんじゃねぇ、俺は上で、お前は下だ!」

 

というポルナレフ外交を個々の国民が礼儀正しく行えば、いずれ日本は精神的に世界を征服するであろう。

 

これが私の言う、『良い差別』である。

捕らぬ狸の皮算用

主は貧しい仕事に就いておられた。

自分で自分に自信があったので、そのような立場にいることが大いに不満であった。

自尊心を傷つけられたような気持ちになって、酒におぼれることもしばしばであった。

そこでもっと社会的地位が高く、より所得の高い仕事に転職することを常に考えていた。

しかしいくら考えても現在の状況から抜け出すアイデアは生まれてこない。

そこで主はまず「自己啓発本」なるものを読んでみることにした。

そのことにより、自分の意識が変わり、金持ちになるための基礎的なマインドが出来ると考えた。

しかし読んでみても、ならば具体的にどうすればいいのかということが、実際に見えてきたわけではなかった。

ただそれは単に時間の問題で、自己啓発の済んだ自分には将来金持ちになるのは間違いないことなのだ、と思われた。

そこで主は将来金持ちになった後のことについて、いろいろと妄想を始めた。

お金を「一日で使い切る」事を条件に、いきなり一億円渡されたとして、それを果たして「一日で使い切る」事なんてできるのだろうか。ペヤングの「超大盛やきそばマヨネーズMAX」240円で満足していた自分が、いきなり寿司屋にでも行って大トロをたらふく食べるか?それでも一億円なんて使えるか?ガストでドリンクバーだけ頼んで、コンセント付きの席でネットをやっていれば楽しかった自分が、どこでどうやれば一億円なんて使える?車をダイハツのミライースからトヨタのレクサスにでも替えるか?日本の狭い道路では軽自動車の方が快適に運転できるのに、それを捨てるのか?考えられない。

とすると、お金というものは案外稼ぐよりも使う方が難しいものなのかもしれない。下手にお金持ちになりすぎるというのも、考え物かもしれないぞ。

などと思い至って悦に入ったかと思えば、後に考えたのは次のようなことである。

お金持ちになるのは結構だけれども、世の中の金持ちたちはどこでどのように女性と出会うのだろう。アイドルや女優とどこでどうやって知り合うのだろう。案外、そういう女性たちも出会い系サイトとか使っていたりするのだろうか。わからないのは検索の仕方が悪いのだろうか。「女優志望」とか、「元女優」あるいは、「元AV」、「元キャバ嬢」……………………とかで検索したらどうなるのだろうか。そう思って、実際にアプリをスマホにダウンロードして検索して試してみたりした。

もちろん具体的な稼ぎ方が見えているわけでもなかったので、それでだからどうするでもなかった。

やるだけやって、己の行動の下らなさに思い至った主は、次に以下のようなことを考えた。

私が金持ちになったら、もう働きたくなんかないと思うようになるだろう。そうしたら、毎日が休日のようなものになってしまう。富士五湖までドライブに行って帰ってきても六時間くらいしか経ってなかったことがあるが、暇な時ほど時間というものは絶望的に長く感じてしまうものだ。そんな時間を持て余して、酒を朝から飲んだりするようになったらどうする?朝から晩まで酒ばかり飲んで、飲んだくれて、肝臓を壊して、自分は野垂れ死にでもするのではないのか?だとしたら、金持ちになってもある程度は仕事をしていた方がいいのかもしれない。しかしそれで他人に自分だけ金持ちであることがバレたらどうする?自分は理性では隠すべきだと思っていても、秘密をひけらかして優越感に浸りたいという欲求に勝てないかもしれない。自分が金持ちであると周囲に吹聴して回る人間がどういう運命を辿るか、知らない私ではない。金持ちになったところで、泥棒に財産を奪われて家族もろとも惨殺されるような死に方をしたいのか?

主は己の妄想が恐ろしい結末に辿り着いたことで、ようやく以下のような結論に思い至るようになられた。

 

私がこれまで、まだ金持ちにもなっていないのに考えてきたことは時間の無駄である。そのようなことを考えた時間の分だけ、実際に金持ちになるのは遅くなっていく。必要なのはまず行動することである。具体的にどうするか、思考することから逃げないことである。

 

主はそのようなことをまるで神聖な悟りででもあることのように考えられ、再び悦に入るのであった。

創世記

主は「金が欲しい」と言われた。

政府は全国民に定額給付金を100万円配った。

インフレ率は0%から2%に上がった。

経済学者は言った。「ハイパーインフレーションが起きている!国家財政が破綻する!」

主は「あほ」と言われた。

 

主は「もっとお金欲しい」と言われた。

政府は継続的に10兆円財政出動することにした。

企業は内需拡大に対応するため投資と雇用を増やした。

インフレ率は上がらなかった。

国民が派遣などという条件では働かなくなった。

竹中平蔵が「ちっ」と舌打ちした。

主は「てゆーかそもそも働きたくないんだよね」と言われた。

主は誰かに「ぼけ」と言われた。

 

主は「働かないで、お金が欲しい」と言われた。

誰かが主に一億ビットコインをプレゼントした。

主は一億ビットコインの入ったスマホを持って吉野家に行き、牛丼の超特盛を食べた。

会計の時、店員は言った。「税込みで805”円”になります」

主は言われた。「なんでも安ければいいという考え方はよくないよ。おいしいもの、価値のあるものにはそれに見合った対価を支払うべきなんだ。だから僕はその十倍の8000ビットコインを支払う。余りはチップとして取っておいて」

店員は改めて言った。「805”円”になります」

主は言われた。「円なんてないよ。8000ビットコイン支払うよ。いい取引だろう?」

主はその後、一日を警察署で過ごされた。